内田先生:メディア・リテラシーとトリックスター
練れた読者は、メディアが誰をほめようとけなそうと、かならず割引をして情報の「補正」を行っている。
(中略)
発言する識者自身、「自分が100と言ったら70くらいに読者は補正して取るんだろうな」と無意識に計算している。だから、「70」と言うべきときに「100」と言う。
(中略)
しかし、書いている本人はそんな「かさ上げ」の操作を自分自身がしていることにしばしば気づいていない。 その「病識」が希薄である。
「勉強させてもらいます。」と云う店員。「もうちょっと何とかなるやろ。」とか何とか言っている間に、店長か責任者にお伺いを立ててくる振りをして店の裏に引っ込み、結局いくらか値引きする。
関西の店頭ではそういうやり取りが一般的だ。
端からいくらか値を引くつもりで、少し高めに値札に書き込んでいる。
消費者は、自分が手に入れようとしているものの価値を見定める能力が必要である。
物質としての価値のみならず、手に入れたものを使って得られるベネフィットにコストが見合うかどうか、ライフスタイルまで含めた判断が求められる。