生活

面白いことは特にない、ただの日記です(投稿後に、二三日かけて書き直します)

望郷

中学校で百人一首の大会がある。
高校受験を控えている息子が、熱心に練習し始めた。昨年度のクラスチャンピオンに味をしめて、今年も勝つつもりで居るようだ。端から見ていると、そのようなことをしている場合なのか、はなはだ疑問であるが、やりたいことには集中し、熱中する。
居間に下の句の札を並べて、母親に上の句を読んでもらう。取る練習をしていた。一首目。
「あまのはらふりさけみればかすがなる」
阿倍仲麻呂*1の句である。
「みかさのやまにいでしつきかも」
百人一首の中でこの歌が一番好きだ。望郷の歌である。
私は北海道で生まれて育ったので、北海道がふるさとである。若い頃は変化を求めて、二十五歳で地元を離れ大阪に出てきた。
淀川からさほど遠くないワンルームのアパートで一人暮らしを始めた。エピソードは色々ある。孤独感にさいなまれ淀川の堤防に上がり西の空を見ると、夕日があって、飛行機雲がいくつも私を追い越していく。
少し辛い思い出だ。
仲麻呂の句を見ると、いつもその時の夕日の空を思い出す。
百首すべてをほぼ完璧に記憶している息子だが、100枚の下の句札の中から「みかさのやまに」を見つけられず、諦めて次に進んでしまったので、私が一枚ずつ目を配り、ようやく下の句を見つけて仲麻呂の句を完成させた。
北海道でも百人一首をやったが、分厚い木札に毛筆の草書で下の句が書いてあり、下の句を読んで下の句を取る。
草書ゆえに子供には読み取りがたく、特徴的な「乙女の姿しばし」や「三笠の山に」は子ども達に人気の札である。

*1:古語辞典では安倍