私は犬と生活しているが、猫には興味がない。今まで猫と生活するチャンスは一度もなかった。
家の敷地の中に、ノラ猫が3匹ほど入り込んで来る。
近所の小さな公園で、猫に餌を与えている人がいる。それで野良猫が集まるようだ。猫たちが勝手に我が家の敷地に入るのは好ましくない。特に、バイクのシートの上に乗られるのが困る。爪で引っ掻くのでシートが破れる。毛まみれになったり、排泄をされる心配をしている。猫たちには、私がこの家に住んでいて、あまり野良猫たちに関わりたくないと思っていることに気付いてほしい。
事件が起きた。
先日、いつもの時間に通勤のためにバイクに乗る用意をして玄関を出た。玄関脇のバイクに近づくと、ネコがバイクのシートの上で寛いていた。私がそのことを快く思っていないことを理解してもらうつもりで、睨みつけた。猫は渋々バイクから飛び降りて、隣の家の敷地の境目でこちらを見た。
まだ若い、茶色の斑のある白い猫である。少し脅かすつもりで、二、三歩近づいた。猫にしてみれば、やばいおじさんに絡まれたくないと思ったのだろう。ようやく隣の家の車の下に逃げ込んだ。
やれやれと思いながら荷物をトンランクに収めて、チェーンロックを外して、バイクのカバーを剥がそうとしたら、カバーの下からもう一匹、さらにフロントタイヤの近くから更に一匹、もう少し体格の良いねこが飛び出してきた。こちらの二匹は今までも何度か見かけている。シートに座っていた猫は、初めて見たかもしれない。
公園で野良猫に餌を撒くのはやめてほしい。残った餌を目当てにカラスが集まる。市役所に相談すべきかもしれないと思いながら、バイクを出して、跨った。1200ccもある大型バイクなので、駐輪場から出してまたがるのも一苦労である。
交通は割とスムーズで、予定通りの時間に職場に着いて、職場の駐輪場にバイクを停めて、ふとトランクの鍵が見当たらないことに気付いた。
鍵束は三つあり、一つは家と職場の自室の鍵が付いた赤いキーホルダー。バイクのキーはペパーミントグリーンのキーホルダー。それから、バイクのトランクの鍵とチェーンロックの鍵はグレーのキーホルダー。グレーがない。
全く心当たりがなく困惑した。トランクが開かないと、仕事の道具を取り出せない。（と言っても、iPadと IDカード、それから弁当とコーヒーポットか。iPadが使えないのはとても困る）記憶を辿るが定かではない。猫に脅かされていつもと違う行動になった。注意力散漫である。トランクにキーを刺したままで途中で落とした可能性がある。妻に電話して、バイク置き場周辺にグレーのキーホルダーが落ちていないかどうか聞いたが、無いとの事。決心して一旦自宅に戻ることにした。部屋の引き出しに合鍵はある。
高速道路を利用すれば、往復しても会議には間に合うだろう。
自宅に戻り、家の前にバイクを止めようとした。普段はそのようなことはせず、帰宅したらそのままバイク置き場に突っ込む。サイドスタンドを出して、バイクを止めようとしたが、いつもと様子が違う。サイドスタンドがきちんと出ておらず、バイクが傾き出している。サイドスタンドの確認を怠ってバイクを倒すというのは、以前にも一度経験している。そのままバイクが倒れたら、倒れたバイクが我が家の車のフロントを直撃する。必死になって左脚を踏ん張り、両腕を力一杯引っ張って、かろうじて立ちゴケを免れた。この一年ほどで最大の危機だったかもしれない。
結局キーホルダーは見当たらず、引き出しから合鍵を出して、職場に向かった。
自宅と職場の間を一往復半、仕事前におよそ90分間それなりの緊張感の中バイクに乗り続けるのは、相当体力を削がれる。全く疲れた。
自分が持っている3つの鍵束の使い方を考え直す機会にすることにした。まずは、いらない鍵を外すこと。三つあるキーホルダーをまとめることにした。
疲れ切って帰宅し、バイク置き場にバイクを入れて、カバーを被せようと物置から出したら、何やらチャリンと音がして、キーホルダーが落ちてきた。ノラ猫とやりとりしている間に、バイクカバーの上に鍵を置いて、鍵ごとカバーを丸めて物置に入れてしまったということだったようだ。
一応、解決した。いくつかの不注意があり、幸運があって、私は怪我もせず、バイクも壊れず、車のダメージも免れた。そして、キーホルダーのいらない鍵を整理することができた。私にはまだ少し、運が残っているようだ。
職場の検診を受けた。朝食を抜いて、腹ペコで犬と散歩して、職場に向かうのは結構なストレスである。
かなり歳をとって、検診結果が正常と出るかどうか、心許ない。ずっと、自粛ストレスに晒されている。普通です。元気です。とは、なかなか言いにくい状況である。特に、仕事の面で今の時期は前期前半の科目と前期後半の科目の入れ替わりの時期で、大変忙しい。計画的に準備が出来ていれば良いが、私はそういう計画性に乏しい。
忙しいと、ストレスを感じるし、ジョギングも思い通りでない。より強く、体の衰えを自覚する。
こういう話は愚痴っぽくなる。気に入った道をいくつか見つけて、楽しく走っている。ワクチンの接種が進んで、ジョガーがマスクをしなくて良い社会が戻ってほしいと思う。
