生活

面白いことは特にない、ただの日記です(投稿後に、二三日かけて書き直します)

ラジオ

今から30年ちょっと前、短波放送を受信することがちょっとしたブームになった。ブームになったのは、ラジオを買うことだったのかも知れない。とにかく、男の子は皆、短波放送を受信できるラジオを欲しがった。
ソニーという会社が、高級ラジオを売り出した。そのラジオのカタログには数字が並んでいた。トランジスタを幾つ、ICを幾つ使っています。3バンド、出力は何ワット、ジャック(コードを繋ぐ穴、端子)が幾つ。
ラジオを聴く本質とは余り関係のない数字が並んでいた。製品名にも数字が付いていた。
ごく普通のラジオの何倍かの値段。良くそのようなものを売ったものだ、というか、買ったものだ。私も買ってもらった。
海外の短波放送を受信して、受信記録を送ると、美しいベリカードという受信証を送ってもらえる。高性能ラジオを使って世界の放送局のベリカードを集めよう、と云うような宣伝文句だった。私は騙され、他の多くの男の子達も騙された。男の子達は昔も今も、カードを集めることに執着する。
ロッドアンテナを伸ばし、海外の放送を受信する。ラジオオーストラリアは比較的良く受信できた。もちろん、少年達が狙うのは、海外の放送局が送信する日本語放送である。内容が面白かったかどうか記憶にない。多分、子供たちには詰まらなかったか、まともに受信できなかったかのどちらかだろう。
子供たちの小遣いではとうてい手の届かない値段で、親にせがんだ。海外の放送を受信する。英語の勉強になるという言い訳。親たちは「英語の勉強」と云うセリフに弱い。
結局、一番良く受信できるのは、朝鮮人民中央放送の日本向けプロパガンダ放送である。ソニーは子供たちに分不相応なラジオを売りつけ、プロパガンダ放送を受信させたわけだ。
ラジオは流行ったが、短波放送はあまりはやらなかった。それから数年が経ち、高級ラジオの普及は深夜放送の流行の布石となったと思う。高級ラジオを布団の中に引きずり込み、当時北海道ローカル局で放送されていなかったパックインミュージックやセイヤングを比較的少ない雑音で聴いていた。