生活

面白いことは特にない、ただの日記です(投稿後に、二三日かけて書き直します)

永遠のファシズムに関するメモ

ウンベルト・エーコ著(和田忠彦訳)岩波現代文庫
多分、昨年購入してすでに一度読み通している。
エーコはイタリア人の作家で、私の父とほぼ同じ世代、つまり多感な少年期に第二次世界大戦を経験し、ファシズムに染められ敗戦によるイタリア社会の転換を目撃した。
1995年4月にニューヨークのコロンビア大学で行われた講演を元にしている。

自由の意味するところ

1943年7月23日、ファシズム体制が倒れた日の新聞紙面を見て、エーコーは「自由」と「独裁体制」の意味に気付いた。
今ここにわたしたちがいるのは、ほかでもない、過去に起きたことを思い出し、「かれら」が2度と同じことを繰り返してはならないと、厳粛に宣告するためなのです。

ファシストとは

「かれら」とは、すなわち、解放戦争は誰からの解放だったのか
ムッソリーニには哲学はなく、あるのは修辞だけ。
ファシズムには、いかなる精髄もなく、単独の本質さえありません。
ファシズムという用語は、あらゆる場合に適用可能。
しかしながら、ファシズムの典型的特徴を列挙することは可能。

  1. 伝統崇拝
  2. モダニズムの拒絶
  3. 行動のために行動し、文化はいかがわしい批判的態度
  4. 批判を受け入れない。
  5. 余所者の排斥
  6. 欲求不満から発生する新しい多数派
  7. ナショナリズムと外国人排斥に繋がる陰謀論
  8. 他者のことを客観的に捉えることができない
  9. 生きることの意義を見出し得ない
  10. 弱者蔑視を伴う大衆エリート主義
  11. 死の崇拝と結びついた英雄崇拝
  12. 性的な画一性
  13. 質的ポピュリズムを構成する民衆
  14. 貧弱な語彙と平易な構文による新言語によって批判的な思考を制限する

まとめ
これ以上ないような無邪気な装いで原ファシズムがよみがえる可能性は今でもある。
私たちの義務は、その正体を暴き、毎日世界の至る所で新たな形をとって現れてくる原ファシズムを、一つひとつ指弾すること。

エーコーの見立て違いと思われる点

彼らとは誰のことなのか。第二次世界大戦以前にヨーロッパを支配したさまざまな全体主義政権を、いまだに想定しているのなら、歴史的諸条件が異なる状況下で同じ形態が蘇ることは困難であると、安心して断言できると彼は言う。
果たして、今(2024年)の世界は、エーコーがおよそ30年前に考えた通りであろうか。