とある医師がタミフルの承認取り消しを求めているらしい。
医学という科学研究の根拠に基づいた政策として、リン酸オセルタミビルは承認され、医薬として認められた。その判断そのものの間違い、あるいは医学研究が提供した証拠そのものに対する嫌疑ということなのだろう。
私は、この医師がどういう立場の方か存じ上げないけれども、今回の一連の「騒動」のなかで、厚生労働省の態度に問題を感じる。医学が科学的根拠を与えているのなら、毅然としているべきだし、それを改めるなら改めるだけの証拠を示すべきだ。
副作用が疑われ、副作用でないという見解を示す上では、副作用でないという科学的な根拠を示すべきだが、どうも厚生労働大臣の態度表明は科学よりも、マスコミの記事に迎合した印象を持つ。
タミフルカプセルの添付書類(2006年改訂の第14版)には、警告として、
- 使用にあたって必要性を慎重に検討せよ
- 予防の基本はワクチン療法であり、それに置き換わるものではない
とある。また、小児向けドライシロップ(2006年8月改訂14版)には、
- 予防目的の使用は推奨されていない
とある。
今年の冬は子どもたちが入れ替わり立ち替わり、溶連菌感染症で高熱を出した。去年はインフルエンザに苦しんだ。
外来で簡単な問診を受け、診察は一種のセレモニーで、綿棒を鼻の穴に突っ込んで、インフルエンザの検査。陽性ならタミフルを処方、というのが昨年の小児科外来で行われたことだ。
効能・効果には、
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防
とある。
さらに使用上の注意として、
- (前略)全ての患者に対しては必須ではないことを踏まえ、患者の状態を十分観察した上で、本剤の必要性を慎重に検討すること。
とある。我が家の子どもたちが、昨年小児科外来で経験したことは、簡単な問診と診察のあと、鼻粘膜分泌液の検査が行われ、単純なパターン認識の一つとして、診断名が告げられ、タミフルを処方された。その必要性を十分に検討したり、状態を十分に観察しているようには思えなかった。おそらく、厚生労働省や製薬会社が意図していないような処方の仕方だったのだろう。