生活

面白いことは特にない、ただの日記です(投稿後に、二三日かけて書き直します)

免疫

予防接種の話で、いろいろと勉強したついでに、岩波新書「感染症と闘う」(ISBN4-00-430870-4)を購入し、チラチラと読んでいた。著者二人(岡田晴恵、田代眞人)両氏はともに、国立感染症研究所の所属で、要するに、予防接種推進派ということである。
素人向けに、分かりやすく書いてあるが、部分的に専門的過ぎる。
今年は、インフルエンザが大流行ということらしい。我が家の子供達も罹患した。予防接種を受けていたにもかかわらず。
インフルエンザの予防接種は万能ではない。少なくとも、現在使われるワクチンは、(彼らが主張するように、超過死亡の減少などの効果はあるにせよ)決して満足のいくものではない。
満足行くものではないが、それに頼らざるを得ない状況である。予防医療に携わる人々の苦悩や苛立ちが伝わってくる。しかしながら、力およばない医学研究の現状をもう少し謙虚に表現していただきたいと思った。
個人防衛が十分に出来ないワクチンを、集団防衛の手段として推進することの是非に関して、著者らも確信が持てずにいるようだ。有効な手段であるとほのめかしながら、接種の義務化に関しては全く消極的に思える。
ともあれ、とりあえず、「インフルエンザは風邪の一種ではなく、極めて伝染力の強い危険な感染症である」という点。これは十分に理解できた。
さらに、後半、成人麻疹の話題も興味深かった。
予防接種により免疫を付ける、という、ジェンナーの種痘の開発以来、信じられてきた原理が、通用しなくなりつつあるということだ。日本の麻疹(はしか)の予防接種率はおよそ80%程度のとのこと。中途半端なのだ。流行を繰り返しているときは、一度罹患し、免疫が出来た後に、再度ウイルスに暴露される機会があった。これによって、免疫は強化されるが、現在は流行そのものが小規模で、散発的になっているため、再感染の機会が減り、免疫が低下していく。また、予防接種に頼らず、子供のうちに実際の病気に掛かって免疫を付けると云う発想も、流行自体が抑制されつつある現状では希望通りにならない。しかしながら、80%程度の接種率では、感染症の制圧、排除、根絶からほど遠い。
即ち、天然痘のように、地上から根絶されるまで、人は定期的に麻疹の予防接種を受け続けるべきだというお話。
予防接種の効果と裏腹な危うさを感じた。